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積木とわたし 1/3

 子どもの頃、積木で日課のように遊んだ記憶があります。いろいろな大きさの角柱や円柱がわたしの気持ちのおもむくままに変貌してくれるのが魅力でした。都市計画をしたり、建築家になったり、時には一個の角柱を自動車に変える魔法使い。
 そんな思い出が心に深く残っていたためでしょうか。学生時代に幾種もの積木をデザインしました。一人、二人で遊ぶものも、集団で遊ぶものもつくりました。
 大学を出て、保育用品のメーカーに入社し、そこでもまた積木の創作。保育士の真似ごとを浦和の保育園で体験したのはその後のことです。そこで子ども達がすぐ飽きてしまうおもちゃが多い中で、積木は心をとらえ続ける力があることを再認識しました。

変わらぬものへの希求

 いつの時代にも、どんな民族の子にも変わりなく愛され続ける積木のようなおもちゃがある。できることなら、デザイナーとして、そんなおもちゃをつくっていきたい。わたしの心の中に新たな意欲が芽生えました。
 それは普遍性に対する希求でもありました。あまりにもあっけなく移ろいゆく人の世の姿が若い心に淋しく哀しく感じられたのです。
 確かなものが欲しい、確かなものが創りたい。変節し、変心する自分の心を観るにつけ、感じるにつけその願いは強まっていきました。
 おもちゃとは何か。
 人間とは何か。
 自分はいったい何のために生まれたのか、生きているのか。
 他者を傷つけ、ヌケヌケと生きている自分を知りながら、いつもどこかで変わらぬものを求め続けていました。そして、それは、なぜ積木が子どもの心を掴み続けるのか、という問いと、どこかでつながり合うはずだと思っていました。
 幾つも幾つも角柱からその後も童具を創り続けました。童具と関わりはじめて三十数年。いま、やっと人生の命題と積木の魅力が一致しました。

(和久洋三著)

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