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ボール遊びが育てる世界 4/6

九つの知覚

 以上のような子どもの意識の発達や、子どもの中に目覚めつつある力と活動への意欲、そしておぼつかない表現の中に秘められている子どもの欲求を大人が敏感に読みとることによって、落ち着いた元気な子が育ちます。しかし、そのためには子どもの意識の動きを読みとるための「測定器」のようなものが必要になります。ボールはそのためのものでもあります。
 ボール遊びの中で子どもには
 いま存在していること=「現存」
 存在しているものが消えてなくなること=「消失」
 消えてなくなったと思えたものが再び現れること=「再現」
の観念が芽生えます。
 同時に「結合と分離」から「再結合」の観念も直感されます。
 それは、母体からの誕生とその後の共同生活、出会いと別れと再会等に共通するものですが、それによって子どもは見失ったものを探すようになります。

 そして
 「現在」所有しているということと
 「過去」に所有していたということから
再び所有するだろうという「未来」に対する観念も生まれてきます。
 その中で
 「在る」こと「存在」
 「持つ」こと「所有」
 「成る」こと「生成」
 つまり、「存在するもの」に対しては、「持つ=働きかける」ことによって「新しい事態が生まれる=生成する」ことを知っていきます。
 こうした諸観念は子どもの誕生と同時に子どもの中にぼんやり現れてくる最初の知覚です。しかし、それはその後、ものごとを感じ考えていくうえでの基盤となります。
 そして、これらの知覚と同時に最初は区別できなかった
 「対象」と「時間」と「空間」
の三つの最も基本的な知覚が発達します。ある対象(物やものごと)を意識した時、かならずそこには時間と空間は切り離せないものとして存在します。
 そしてまた空間と対象の知覚から
 「上下」と「左右」と「前後」の知覚が生まれ
やがて対象との時間に関して
 「現在」「過去」「未来」の知覚が発達してきます。
 そしてそれは「存在」「所有」「生成」の活動を通して、確かな知覚になっていきます。
 このものごとを客観的に認識していくうえで、なくてはならない「九つの知覚」を1個のボール遊びによって発達させているのです。
 子どものすべての発達の基礎は、このような活動の、かすかな刺激と知覚の積み重ねによってつくられていきます。はじめは跡かたもなく消えていくような知覚が、数えきれないほどの繰り返しによってしだいに子どもの中で確かなものになっていきます。
 このような原理・原則的なものごとのあり様を人生の最初の段階で直感することは、その後経験する複雑多様なものごとを紐解く重要な手がかりになります。

(和久洋三著/『遊びの創造共育法 ②ボール遊びと造形』より抜粋)

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